オーダープラチナラペルピン "桔梗に松皮菱" 打合せ〜製作風景 〜滋賀県 T様〜
ラペルピン仕様 |
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モチーフ |
T様の家紋 "桔梗に松皮菱" |
素材 |
PT900
(本体及びポスト部分) K18ホワイトゴールド (キャッチ部分) |
打合せ方法 |
メール、お電話 (おもにメールでの画像確認) |
製作期間 |
デザイン決定から約2ヶ月 (最初のメール・お電話での打ち合わせより3ヶ月半) |
このページでは、マイクロジュエリーでの"オーダージュエリー製作の流れ"を お客様にご理解いただく為、T様の許可の得て、オーダーの実際の流れの一例としてご紹介致します。
マイクロジュエリーのブログ:http://microjewelry.blog133.fc2.com/blog-category-2.html
の方でも、当時の実際の流れをご確認いただけます.
お好きな方法でお客様のオーダージュエリーの製作のご参考にしてください。
〜1.デザイン編〜
ここからはお客様とやりとりを繰り返し、理想のデザインを決定する。 "オーダージュエリーデザインの流れ"です。 ご参考ください。
滋賀県にお住まいのT様はマイクロジュエリーのホームページをご覧になって頂き、お問い合わせフォームよりお問い合わせいただきました。
メールにて返信後、お電話にておつくりされたいジュエリーのご希望をお聞きすると・・・
@仕事でも使用しているオリジナル家紋 "桔梗に松皮菱"でラペルピンが作りたい。
A素材はプラチナ、ゴールドとのコンビも検討。 石は使用しない。
Bアウトラインは提出する家紋の画像※の バランスを崩さず、桔梗の花の柔らかい曲線を活かして。
C予算は特に考えて無いが、 "オーダーメイドの一生使えるような逸品"を 出来るだけ安く。 |
いうことでした。
Cの"出来るだけ安く"に関しては当社はオーダーメイドのジュエリーにしてはかなりお安くしているので後ほどTさまもご満足していただけるのですが・・・
やはりBのデザインが肝。
"オーダーメイドの一生使えるような逸品"という事にも大きく関わってきます。
ジュエリーの出来の半分をデザインが占めるとすると、 後の半分はデザイン以上の形になるよう実際に製作する事。
デザインが綺麗でも実際に製作したジュエリーがよほど劣ったものならガッカリですからね。^^;
今回はご提出のイメージを見てみると、シンメトリー(左右対称)で線幅も一定。
"家紋を上から見たアウトラインはそのまま"という事ですので、デザイン方法は これを最も得意とする、海外有名ジュエリーブランドも使用している最新のジュエリーCAD(ジュエリー設計専用ソフト)を用いて、まずは様々なパターンでモデリングすることに。
ジュエリーCADは実寸でほぼ完成品のイメージ通りに表示・型製作出来る事が特徴です。
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とこれより下、省略はしていますが、お客様との実際やりとりの風景になります。 当店のオーダーメイドのジュエリーに興味のある方は是非ご覧ください。
まず始めに、イメージを絞るためにラフデザインとしてCGをお見せしました。
下の一覧図はその中の一部となります。
各デザインパターンを解説すると・・・
A.よくある一般的なタイプ。花弁の中は1段落としてマット(つや消し)。 B.七宝(エナメル)のホワイトを花弁にいれたデザイン。 C.Bのプラチナ地金にブラックロジウムをコーティングし、メンズ色を強めたもの。 D.桔梗のリアルなイメージを参考にして、生花のように立体的なデザイン。 E.Dの花弁部分を透かして、軽さを出したデザイン。 F.桔梗の柔らかい曲線を活かしつつ、格好良いシャープな形に。 こちらも透かしてスッキリと。 |
という感じになっています。
基本的にフルオーダーではいつも、お客様が完成形のイメージをよほど具体的に持ってらっしゃらない限り、お客様に頂いたご希望を元に、イメージを絞る為の様々なラフデザイン(大まかなデザイン)を描きます。
そしてお客様にメール画像などでデザインをご覧頂き、気に入られたデザインを叩き台に修正・追加し、洗練していくという感じになります。
この中からT様がお気に入りされたのはFのデザイン。
個人的にもF、D、Eがオススメでしたので良かったです^^
そしてFのデザインを叩き台に、厚みや形状をいろいろ変えて、試しにモデリング・・・
T様に画像で確認して頂き、相談すると・・・、
"最初に製作したFのデザインが厚み、形状(アウトライン)も最適"
という意見で一致しました。
そして素材、ご希望を聞きながら、パーツごとにK18イエローゴールドとプラチナのコンビも試しましたが
「これはわるくないけど少し派手」 ということで、やはり本体は "プラチナ一色" でシンプルスマートに格好良くということになりました。
本体素材がオールプラチナに決定したところで、 「松皮菱の内側を段落ちにしたらどうなるでしょう?」 というお客様からのご提案がありました。 といういうことで、菱の内側を凹←のように1段落とした面を作ることを試すと・・・
これがまたとないドンピシャのご提案!!
デザインに深みが増しました。一気に洗練された印象です。 お客様にもどんどんイメージだしてもらったほうが良いデザインになっていく事が多いですね。 この時点では松皮菱の中はマット(つや消し)の仮予定でした。
そしてこだわりにこだわるつもりのTさまに "松皮菱の裏にお名前や好きな言葉を好きな自体で入れる" ご提案すると、興味をもっていただけ、何という言葉入れるかお考え・・・
ご自身の名を頂点に、
"心"技""和""礼"
と信念を刻まれることに、これを着けて仕事すると 背筋が"シャキッ"としそうですね〜^^
こういう"信念"のようなものや、好きな人、事、モノを刻印するのはジュエリーを"お守り"のような意味で着けれるので本当にオススメです^^
いよいよ外形は詰まってきました。
次にキャッチの素材です。
これは通常、本体がプラチナでも、キャッチは真鍮やニッケルにロジウムをコーティングし、プラチナ色にしているところも多いです。(プラチナのキャッチが廃盤なのも影響あるかも?) T様は、ここはこだわってK18WGホワイトゴールドのシャンパン色で渋くすることに決定されました。
左:通常日本でよく見る K18ゴールドにロジウムコーティングしてプラチナ色にしたもの。
右:K18ホワイトゴールドの地色。 シャンパンのような渋いお洒落な色で、お好きな方にはとてもオススメ。
そして、松皮菱の中の面を光沢にする(同業者の方なら分かると思いますが、一段落ちの平面を綺麗に光沢にするのはかなりの技術を要する)というハードルの高い仕様を追加され・・・
あとは・・・
ございません!!!
これにてデザイン決定と相成りました!!!
ラフデザインから決定まで約1ヶ月。
今回はお客様とよく考え、納得いくまで打ち合わせのやりとりをした分、それだけ深い、 洗練されたデザインに決定することが出来ました。
ここまではデザイナーとしての仕事・・・。
あとはこれを実際にジュエリーとして形にする職人としての仕事が待っています。
(製作編につづく)
〜2.製作編〜
ここからは決定したデザインを同じ、あるいはそれ以上のジュエリーにする為の "オーダージュエリー製作の流れ"です。
決定されたデザイン
このデザインを元に、それと同じ、あるいはそれ以上のものを目指して製作して行きます。
それでは製作順で画像にコメントを付けておおまかな製作工程をご紹介します。
↓
まずはDATAを元にWAX(ロウ)を切削。 →それをプラチナへキャスト(鋳造) 出来たプラチナの本体にはまだ、キャストの際の湯口 (プラチナの注ぎ口)の跡や、表面に冷え固まる際のヒケ (へこみ)があり、まずここから整形します。
このあずきみたいなのが"湯口跡"です。 プラチナの溶けた地金が通った跡です。 慎重に削りとります。
鑢(やすり)や・・・
歯医者さんでおなじみのウィ〜ン・・・のアレ^^ "リューター"を使い、様々な先端ポイントから用途に合ったものを選んで切削します。
※ちなみに写真はダイヤモンドが表面に電着されたポイント
つるっと綺麗になりました^^
今回のデザインの特徴でもある、"K18ホワイトゴールド"の地色"シャンパンゴールド"の"キャッチ(軸受け)"と、本体と同じくPT900(1000純プラチナより耐久性に優れます)の"ポスト(針)"です。完成形をイメージしながら作業していきます。
見えますか!?これがヒケです!! これは超〜難儀な所に出来ているのですが、根気と努力で慎重にマイクロスコープと各種ポイントも勢ぞろいで、読んで字のごとく、手作業で木片に研磨剤をつけたもの等も使いつつ何とかします。
地味で根気のいる作業ですが、ここが正念場。
初めは超ミニサイズの精密サンドペーパーで慎っ重〜に慎っ重〜に平らにしていきます。
そして研磨剤を鹿の皮に塗布したこれまた超ミニ鹿皮や、先端のとがった木に研磨剤を塗布したものなどで磨いていきます。
幾日かの顕微鏡と格闘の末ですが・・・完了!!
通常、凹みの天面の光沢はどこでもお断りする所がおおいのですが、今回はお客様たっての願いもあり、頑張らせていただきました。 ふぅ〜・・・!!今回は確実にここが天王山でした。^^
次に表面を仕上げながら、超硬のヘラを使って引き締め、また再度仕上げます。 ヘラの工程を入れることで、輝きと輝きの持久性もアップします。
プラチナ粒子の隙間が押しならされて密になり、 まぶしいくらいに美しく輝きます。
ヘラを掛けたあとは超微細な研磨剤をつけた回転ポイントやバフなどで極小の細かい凹凸をならして、キラキラの面に仕上ます。
いかがでしょう? 石がなくてもヘラでもって根気良く仕上たプラチナだとこんなにも美しく輝きます。そして輝きの持久性も上がるのです。
細かい隙間には麻糸に極微の研磨剤をつけて磨きます。
裏のお客様の名前と "心""技""和""礼" の信念ともに綺麗に入っています。 この付近も肉眼では面がダレて仕上げにくい箇所ですが、マイクロスコープを使用し、平面に綺麗に仕上げることができました。
とっても美しいこだわりたっぷりの "桔梗に松皮菱" ラペルピンが出来ました。
今回は打合せの時からお客様とイメージがしっかり定まって、良いデザインが出来、丹念に仕上た結果、それ以上になってくれたと思います。
どの角度から見ても格好良い凛とした雰囲気が漂っていますね。
行書体で入った、 "心""技"和""礼"の信念もデザインにより深みを与えています。
桔梗の花の"柔らかさ"と松皮菱の"シャープさ"のコントラストが絶妙に格好よく仕上がりました。
こちらはスーツのフラワーホールに着用した際のイメージです。
ちなみにTさまは男前なのでこういうさりげなく芯のあるデザインのラペルピンはたいそうお似合いになられることと思います。
〜納品後〜
T様には郵送にてご納品、大変気に入った旨のお電話を頂きました。↓ http://microjewelry.blog133.fc2.com/blog-category-14.html
そしてつい先日お礼のお便りを頂戴いたしました!!
^^ 公開のご了解をくださいましたので下よりご覧いただけます。
追記、 当店のゴールド及び、プラチナジュエリーは、永久無料保障が付きます。 (サイズ直し、新品仕上げ、ゆがみ直し) T様もアフターメンテナンスでキズ取りと同時に、菱の面を光沢→ツヤ消しにされる事をお考えです。
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